身曾岐神社の神域に入り、参拝者が息を呑むのが「神池」の水上に優美に浮かぶ総檜造りの能舞台です。伝統的な能楽堂建築の規範を極限まで高めたこの舞台は、鏡板に描かれた見事な松の絵と、水面に映り込む木々のリフレクションが相まって、現世と異界の境界のような幽玄の美を醸し出しています。
この圧倒的なロケーションは映像業界でも高く評価され、大手通信会社auの人気テレビCM「三太郎シリーズ」において、松田翔太氏演じる桃太郎や桐谷健太氏演じる浦島太郎らが集う幻想的な舞台として撮影に使用されました。放映直後から「あの美しい水上舞台はどこにあるのか」とSNSで大きな話題を呼び、若年層や観光客の参拝が急増する要因となっています。
さらに毎年8月3日には、国内屈指の規模を誇る「八ヶ岳薪能」が奉納されます。夕暮れとともに篝火(かがりび)が焚かれ、パチパチとはぜる炎の音と八ヶ岳の涼風の中、人間国宝をはじめとする一流の能楽師が舞を披露する光景は、まさに一級の芸術体験です。静水に揺れる炎と笛の音は、訪れる者の心を深く浄化する力を秘めています。