ここで一歩踏み込み、なぜ明松美玖さんのようなインフルエンサーが、たぬき掲示板でここまで激しい標的になり続けるのか、その深層心理を社会学および心理学の視点から分析してみましょう。
大きな要因となっているのが、心理学でいう「認知的不協和」と「代理承認欲求」の暴走です。サッカー日本代表として国民的ヒーローとなった田中碧選手に対し、一部の熱心なファンは無意識のうちに「自分たちの憧れの存在」として神聖視します。その隣に立つ女性に対しては、無意識に極めて高いハードルを課してしまいがちです。そこに「容姿端麗」「実家も裕福」「都会的で洗練された読者モデル出身」という、いわば“持てる者”の属性が重なることで、強烈な嫉妬心とルサンチマン(ルサンチマン=弱者が強者に対して抱く怨恨の感情)が点火されます。
本来であれば、彼女の自立した生き方や努力を認めるべきところを、自分の劣等感と直面したくない心理が働き、「あれは整形のせいだ」「裏では性格が悪いに違いない」「匂わせをして男を利用している」と相手の価値を不当に引き下げることで、心の平穏を保とうとするのです。さらに、「雑談たぬき」のような匿名性の極めて高い空間では、同一の悪意を持つユーザー同士が共鳴し合う「エコーチェンバー現象」が発生し、どんな些細な日常の投稿も悪質な陰謀として解釈される負のスパイラルが固定化されてしまいます。
【プロの結論】情報を見極める読者とネットユーザーのための判断基準
ネット上に氾濫する膨大な言説と向き合う際、読者はどのようなリテラシーを持つべきでしょうか。ここで提示したいのは、「健全な心理的バウンダリー(境界線)」を持つ重要性です。
- 冷静に受け止められる人の特徴:発信者の公式な一次情報と、匿名掲示板の「推測・感想」を明確に区別できる人。他人の成功や恋愛を自らの自尊心と切り離し、健全な距離感でエンタメとして受容できる人。
- 掲示板に引きずられやすい人の特徴:他人の華やかな私生活と自分の境遇を比較して劣等感を抱きやすい人。匿名掲示板の「〇〇らしいよ」という伝聞を事実として無批判に信じ込み、集団リンチ的な正義感に加担してしまう人。
他者の幸福を攻撃することで得られる快感は一過性の麻酔に過ぎません。スクリーンの向こう側にいる生身の人間の尊厳を想像できるかどうかが、情報社会を生きる私たち全員に問われています。