120年以上の歴史の中で、バルセロナのサポーター(クレ)を最も震撼させたデザインの事件といえば、2019-20シーズンに登場した「チェッカーフラッグ(市松模様)柄」のホームキットです。伝統の縦縞(パラス・ブラウグラナ)を完全に撤廃したこのデザインは、情報がリークされた段階から「これはバルサではなくクロアチア代表ではないか」と国内外で猛烈なバッシングを浴びました。
では、バルセロナユニフォームチェック柄理由の真実とは何だったのでしょうか。ナイキ社およびクラブが発表した公式クリエイティブコンセプトの核にあったのは、バルセロナ市中心部「アシャンプラ(Eixample)地区」の都市景観へのリスペクトでした。
19世紀半ば、都市計画家イルデフォンス・セルダによって設計されたアシャンプラ地区は、均一な正方形の街区(マンサナ)が八角形に面取りされながら整然と並ぶ、世界でも類を見ないグリッド都市です。サグラダ・ファミリアやカサ・バトリョを抱えるカタルーニャ・モダニズムの中心地であり、バルセロナという都市の創造性と革新性の象徴とされています。
デザインチームは「バルセロナの街そのものを纏って戦う」というメッセージを込めてこのグリッド構造をチェッカーパターンへと昇華させました。しかし、現場のファン心理は別の次元にありました。カタルーニャの社会学者やサポーター有志からは、「アシャンプラのグリッドは上空から見なければ正方形に見えない。ピッチ上で見えるのは単なる伝統の破壊であり、グローバルマーケティングの暴走だ」という痛烈な批判が噴出しました。
実際、2015-16シーズンに採用された「クラブ史上初の横縞(ボーダー)ストライプ」でもサポーターの猛反発に遭った前例がありながら、再び縦縞を解体したクラブ首脳陣に対し、当時のクレの間では「首脳陣はクラブの神聖な記号を金儲けの実験台にしている」という深い不信感が渦巻くことになりました。