ラーメン業界において広く知られる「元祖呼び戻しスープ」という言葉は、大砲ラーメン二代目店主・香月均史氏によって命名され、商標登録もなされている独自の技法です。一般的な博多ラーメンに多い「取りきり(その日のスープを一日で使い切る手法)」とは根本から思想が異なります。
呼び戻しスープの神髄は、厨房に据えられた複数の羽釜にあります。創業以来、一度も釜を空にすることなく、旨味と骨のエキスが極限まで凝縮された「熟成スープ」の釜に、別の釜で下処理・抽出された「若いスープ」を熟練の職人技で少しずつ継ぎ足し(掛け合わせ)ていきます。この緻密なブレンド比率は、季節の湿度、外気温、豚骨の骨密度の個体差に応じて秒単位で微調整されています。
これにより、ゼラチン質が複雑に絡み合った、単一の釜では絶対に到達できない「まろやかさと野性味の共存」が実現します。釜底には溶け出した豚骨の微細な骨粉が沈殿し、これがスープに特有のザラつきと圧倒的な深みをもたらすのです。
そして、大砲ラーメンを語る上で欠かせないもう一つの記号が、ドンブリの中央に浮かぶ「カリカリ背脂」です。良質な豚の背脂から純度の高い自家製ラードを搾り取る過程で残る、サクサクに揚がった背脂の搾りカス。屋台時代、油を無駄にせず最後まで旨味として活用するために生まれた先人の知恵であり、スープの熱を吸うことでカリッとした食感からジュワッとしたコクへと変化する、計算され尽くした名脇役として機能しています。