では、なぜ「々」はこのような独特の形状になったのでしょうか。その由来は古代中国から日本の平安時代、そして近代活字組版へと至る合理化の歴史に深く根ざしています。
文字を繰り返す表記の原型は極めて古く、紀元前の中国・殷周時代の甲骨文や青銅器に刻まれた金文にまで遡ります。当時は同じ文字を2回連続して彫る手間を省くため、文字の右下に二本の短い斜線や横線「=」(重文符号)を添えていました。この「同じ」を意味する記号文化が日本へ伝来します。
日本に漢字文化が定着した奈良・平安時代、貴族や官人、僧侶たちは膨大な古文書や経典を手書きで筆写する必要がありました。その筆記作業の現場で、重文符号に加えて「同じ」を意味する漢字「同」の行書体・草書体が頻繁に用いられるようになります。「同」を素早く書き崩していく過程で、外枠の「冂(けいがまえ)」と内部のパーツが一体化し、筆の運びが極限まで省略された結果、現在の「々」の形へと変化を遂げました。
明治期に入り活版印刷技術が普及すると、鋳造活字の規格化が進められました。その際、手書き文字の草書体から定着していた「々」のグリフ(文字骨格)が独立した活字種として正式に採用され、新聞や書籍を通じて日本全国に「標準的な繰り返し記号」として普及していったのです。