施主を最も悩ませるのが、寺院へ金額を尋ねた際に返ってくる「お気持ちで結構です」という言葉です。なぜ寺院側は明確な料金表を提示しないのでしょうか。ここには、仏教の教理と税制上の理由という2つの決定的な背景があります。
本来、仏教におけるお布施は「布施波羅蜜(ふせはらみつ)」という修行の一つであり、見返りを求めずに仏・法・僧の三宝へ感謝の意を込めて財を施す行為です。つまり、読経という労働への対価(サービス料金)ではなく、ご本尊への喜捨(きしゃ)という位置づけになります。そのため、寺院側が「〇〇の読経は1回5万円」と定額請求してしまうと、宗教行為ではなく商行為(役務提供)と見なされ、教理面だけでなく宗教法人の非課税規定にも影響を及ぼしかねないという構造的な理由が存在します。
都内の浄土宗寺院で副住職を務める僧侶は、取材に対して次のように現場の葛藤を明かしています。
「施主様から『いくら包めばいいですか』と聞かれて『お気持ちで』と答えるのは、突き放しているわけではありません。仏教の理念として定価を設定できないのです。しかし、現代のご家族が困惑されるのも痛感しています。そのため最近では『皆様、概ね3万円から5万円の間でお納めいただいております』と、過去の目安を伝える寺院が確実に増えています」
金額の判断に迷った場合は、「他の檀家様はどのくらい包まれていますでしょうか」「法要を無事に執り行うため、目安をお教えいただけますと幸いです」と具体的に質問することで、寺院側も角を立てずに目安金額を教えやすくなります。