ギターレッスンを担当するプロの指導者が「指サックの使用はおすすめしない」と口を揃える背景には、演奏技術の習得において無視できない3つの構造的デメリットが存在します。
第1の理由は、指先の繊細な触覚フィードバックが遮断されることです。ギター演奏において、指先が弦の中心を正確に捉えているか、どれくらいの力加減で押さえればフレットに密着して音が綺麗に鳴るかという感覚は、皮膚の触覚を通じて脳に蓄積されます。厚いシリコン越しでは弦のテンションを把握できず、無駄な握力を使って弦を押し込みすぎる悪癖が定着してしまいます。
第2の理由は、指先の体積が増加し、物理的に隣の弦をミュートしてしまうことです。ギターの指板上における弦と弦の間隔は、アコースティックギターで約10〜11ミリ程度しかありません。シリコンカバーを装着すると指先の幅が2ミリ前後拡張されるため、狙った弦だけをピンポイントで押さえることが極めて難しくなり、開放弦を鳴らすCコードやGコードですら音が濁ってしまいます。
第3の決定的な理由は、皮膚の角質化(タコができるプロセス)が遅れてしまうことです。ギタリストの指先は、弦の摩擦と圧迫に適応して皮膚が厚く硬くなることで、やがて全く痛みを感じずにクリアな音を鳴らせるようになります。指サックで皮膚を過保護に守り続けてしまうと、いつまで経っても生身の指で弦を押さえられるようにならず、結果としてサックを外した瞬間にまた最初と同じ激痛に苦しむという悪循環に陥ります。