試合開始1時間前、公式発表された長崎対清水のスタメン速報を目にした瞬間、スタジアムの記者席およびサポーターの間には明確な動揺が走りました。V・ファーレン長崎を率いる指揮官は、直近の試合で好調を維持していた主力をあえてベンチに控えさせ、対人守備強度と縦への推進力に特化した構成を選択。この決断こそが、清水エスパルスの生命線である中央経由のパスワークを寸断する第一の布石でした。
試合後の監督会見において長崎の指揮官は「清水のビルドアップのテンポを落とすためには、ファーストディフェンスで立ち位置を狂わせる必要があった」と率直に明かしています。ボール非保持時における4-4-2の強固なブロック形成と、ボール奪取からわずか3手で相手ペナルティエリアへ侵入する電光石火のトランジションは、清水の中盤底の選手に選択肢を与える時間を与えませんでした。
対する清水エスパルスは、前半こそ長崎の前線プレスをいなしてボール保持率を高めたものの、ピーススタジアムの独特なピッチ寸法と密集守備に阻まれ、アタッキングサードでの決定打を欠きました。決定的な場面を分けたのは後半70分の交代カードの切り方です。長崎ベンチは疲労の見える前線を総入れ替えし、前線からのハイプレス強度を維持。これにより清水のバックラインに生じたパスミスを逃さず、値千金の決勝ゴールが生まれる結果となりました。事前の勝敗予想を大きく裏切るスリリングな試合結果は、まさに指揮官の用意周到な戦術的勝利と呼ぶにふさわしい展開でした。