ネット上の言説や掲示板などで長年囁かれている噂に、「中田英寿とベテラン勢の確執・孤立説」があります。中田が周囲のパスミスに苛立ちを隠さず手を広げてアピールした仕草や、試合後のコメントの歯切れの良さがメディアに切り取られ、「若き異端児と昭和的体育会系グループの断絶」というセンセーショナルな物語が作られました。
しかし、後年の選手たちの対談や回想録を読むと、この見解には大きな誤解が含まれていることが分かります。主将の井原正巳や名波浩は「ヒデ(中田)の要求は極めて論理的で正当だった。単にピッチ上でのプロとしての意見のぶつかり合いであり、私生活で仲が悪かったわけではない」と証言しています。日本の「阿吽の呼吸」に頼る曖昧な連携に対し、世界基準の「言葉による明確な要求」を突きつけた中田のプロ意識が、当時の閉鎖的な日本的チームカルチャーと摩擦を起こしたように見えたのが真相です。
また、検索エンジンで「フランス ワールド カップ 日本 代表」と検索する現代の読者が直面するもう一つのトラップが、2023年に開催されたラグビーフランスワールドカップ日本代表結果との混同です。
サッカーのフランスW杯(1998年)とラグビーのフランスW杯(2023年)は、同じ「フランス開催の世界最高峰大会」であるため混同されがちですが、その背景と文脈は大きく異なります。2023年のラグビー日本代表は、チリとサモアに勝利したもののイングランドとアルゼンチンに敗れ、2勝2敗のプールD・3位で惜しくも決勝トーナメント進出を逃しました。しかし、1998年のサッカー日本代表が「初出場で何もできずに打ちのめされた開拓期」であったのに対し、2023年のラグビー日本代表は「2015年・2019年の躍進を経て、世界トップ国と対等に渡り合いながらあと一歩及ばなかった成熟期の挫折」という決定的な構造の差があります。