ここ数年で渋谷のタイ料理界における勢力図を塗り替えたのが、特定の国民食に特化したスタンドや専門店です。総合タイ料理レストランがメニューの豊富さで勝負する一方、「カオマンガイ(茹で鶏の炊き込みご飯)」や「ガパオライス(鶏・豚肉のホーリーバジル炒め)」の一品勝負で連日行列を作る店舗が際立った存在感を示しています。
渋谷東口から明治通り沿い、あるいは桜丘エリアにかけて点在するカオマンガイ専門店では、毎朝丸鶏から丁寧に抽出される濃厚なチキンスープでジャスミン米を炊き上げます。鶏肉の火入れは絶妙で、パサつきが一切ないジューシーな仕上がり。現場の常連客に話を聞くと、「タオチオ(大豆発酵調味料)ベースの秘伝タレと、生姜・青唐辛子のガツンとくるパンチは家庭や一般的な洋食店では絶対に再現できない。週に2回は体がこの味を欲してしまう」と熱弁します。
一方、ガパオライスの評判店では、「バジル炒め」という名に恥じないホーリーバジルの香気と強火の油で縁をカリカリに揚げ焼きにした目玉焼き(カイダオ)のコントラストが秀逸です。日本の一般的なカフェで散見される「スイートバジルを使ったひき肉炒めご飯」とは一線を画し、粗挽きの肉塊から溢れ出る肉汁と激辛唐辛子のインパクトが共存。手軽でありながら中毒性の高い一皿が、多忙な渋谷ワーカーの胃袋を鷲掴みにしています。