必殺仕事人の京本政樹に迫る|組紐屋の竜の誕生秘話と現在の姿

必殺仕事人の京本政樹に迫る|組紐屋の竜の誕生秘話と現在の姿

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1985年1月に放送が開始された『必殺仕事人V』は、シリーズ全体の命運を分ける大きな転換点でした。前作までの重厚な人間ドラマに加え、若い世代の視聴者を劇的に開拓する起爆剤として白羽の矢が立ったのが、当時20代半ばの京本政樹(組紐屋の竜役)と、長身の若手実力派だった村上弘明(花屋の政役)の抜擢でした。

当時の京都映画撮影所(現・松竹撮影所)において、時代劇の殺し屋といえば無精髭に埃っぽい衣装、泥臭い刃物傷が常識でした。その慣習を鮮やかに裏切ったのが、京本政樹自身のセルフプロデュース力です。かつら合わせの段階から細部にこだわり、前髪の垂らし方、襟足のライン、白塗りに近い化粧下地に紅を差す唇など、歌舞伎の女形や少女漫画の耽美主義を融合させたビジュアルを考案。自ら衣装の絹の質感や黒の色味まで指定したと当時の制作スタッフは述懐しています。

京本政樹が繰り出す「組紐 技」もまた、視聴者を釘付けにしました。漆黒の組紐の先端に付けられた銀の鈴が「チリン」と澄んだ音を響かせ、暗闇の梁の上から正確無比に標的の首へ巻き付く。滑車を利用して宙へと吊り上げ、窒息させる刹那、張り詰めた紐を爪先で「ピン」と弾く――。残酷でありながら息をのむほど優雅なこの殺しのシークエンスは、時代劇におけるアクションを「泥臭い立ち回り」から「極上の様式美」へと昇華させました。

結果として、放送枠の視聴率は20%台を記録し、撮影所の出待ちには数千人の女性ファンが詰めかける異例の事態に発展。『必殺』シリーズは単なるお茶の間の時代劇から、一大ポップカルチャーへと変貌を遂げたのです。

石川 優花
著者

石川 優花

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。