『東京ラブストーリー』『Mother』『最高の離婚』、そして映画『花束みたいな恋をした』など、数々の傑作を世に送り出してきた坂元裕二の脚本。その作家性が極限まで研ぎ澄まされた作品こそが、この『いつ恋』です。ドラマ史において本作の評判が今なお高く維持されている背景には、緻密に配置された日常会話と、登場人物たちの人生を丸ごと肯定するような台詞の力があります。
本作を象徴する名言として、ファンの間で今も引用され続けているのが以下の言葉たちです。
- 「恋って、会っている時間じゃなくて、会わない時間に育つものなんじゃないですか」(第3話・木穂子の手紙より)
- 「好きになってくれる人を好きになれたらいいのに」(第4話・晴太の台詞より)
- 「泣いてる時に『大丈夫』って言われたら、余計泣いちゃうでしょ。でも、誰かが一緒にいてくれたら、少しだけ息ができるようになる」(第5話・音の台詞より)
- 「大根の煮付けってね、冷めるときに味がしみるんだよ」(第6話・木穂子の台詞より)
- 「恋は落ちるものじゃなくて、するものだよ」(第9話・朝陽の台詞より)
坂元裕二の筆致は、ドラマチックな事件によって物語を動かすのではなく、「コンビニのおにぎりの味付け」「コインランドリーの洗濯機の回る音」「ファミレスのドリンクバー」といった、誰もが知る生活の断片に感情を宿らせます。生活困窮や非正規労働のリアルな疲弊を描きながらも、決して冷酷な突き放しに終わらず、手嶌葵が歌う主題歌「明日への手紙」の柔らかな調べが重なることで、泥の中から一輪の花を見つけ出すような救済を与えてくれるのです。