物語の背景にあるのは、第一次世界大戦の爪痕が深く刻まれた1920年代のイングランドです。主人公のコニーことコンスタンスは、上流階級の青年貴族クリフォード・チャタレイと結婚します。しかし、出征したクリフォードは下半身不随となり、車椅子生活を余儀なくされて帰還しました。二人が暮らす邸宅ラグビー・ホールは、炭鉱町を眼下に見下ろす陰鬱な空気に支配されています。名門の存続に執着する夫は、文学的名声や炭鉱経営の効率化といった頭脳至上主義に没頭し、妻に対して「別の男との間に跡継ぎを作っても構わない」と冷淡に言い放つほど、心を通わせる対話を放棄していました。
知性だけの生活に窒息しかけていたコニーが出会ったのが、チャタレイ家の森番を務める男、オリバー・メラーズです。森の奥深くの小屋で幼いキジの雛を見つめるメラーズの無骨ながら温かい佇まいに、コニーは理屈ではない生命の温もりを直感します。身分の壁や世間体を脱ぎ捨て、二人は森の静寂のなかで肌を重ね、肉体と魂が調和する歓びを取り戻していきます。本作のあらすじにおいて決定的な転換点となるのは、単なる背徳の快楽ではなく、欺瞞に満ちた上流社会の仮面を脱ぎ去り、ひとりの人間として真実の生を希求するコニーの精神的覚醒です。
衝撃の結末(ネタバレ)において、コニーはメラーズの子を身ごもります。彼女はクリフォードが要求する「体裁だけの貴族の跡継ぎ」という偽善を真っ向から拒絶し、すべてを捨ててメラーズと共に生きる道を選択しました。激怒したクリフォードは離婚を拒み、メラーズもまた前の妻との法的手続きを抱えて職を失います。物語のラスト、二人は一時的な別離を強いられ、メラーズは遠く離れた農場で働きながら、離婚の成立と再会の日を待ちます。メラーズからコニーへ送られた最後の手紙には、困難な時代にあっても「二人の愛の炎」を信じ続ける静謐で力強い決意が綴られていました。