松平健氏が演じる徳田新之助の殺陣(たて)は、日本の時代劇アクションにおける最高峰の完成度を誇ります。その最大の見せ場こそが、抜刀直後に行われる流れるような「刀の反転」動作です。
殺陣の構成を細かく観察すると、上様は鞘から刀を抜いた直後、手首のスナップを利かせて瞬時に刃と峰を入れ替えています。この動作は歴代シリーズを通じて一貫しており、視聴者に対して「ここからは峰打ちである」という合図を無言で伝える視覚的サインとして機能してきました。また、相手を斬り裂く鋭い風切り音ではなく、鈍い打撃音が響く効果音(SE)演出も徹底されています。
さらに、立ち回りの動線にも高度な工夫が見られます。吉宗の太刀筋は、相手の急所(首筋や胴体)を撫でるように打つのではなく、主に肩口、小手、背中、太ももなどを的確に強打して戦闘不能に追い込むフォームが徹底されています。華麗な身のこなしと力強さを両立させた東映京都撮影所の殺陣技術が、上様の圧倒的な強さと慈悲の心を同時に表現しているのです。