ジャクソンリース回路が特に真価を発揮するのは、小児(特に体重20kg未満・乳幼児)の全身麻酔管理や短時間の処置、院内搬送です。その最大の適応理由は、術者の手元に伝わる「圧倒的な情報量の多さ」にあります。
バッグを軽く保持しているだけで、患者の自発呼吸の深さ、呼吸数、肺コンプライアンス(肺の柔らかさ・膨らみやすさ)、気道抵抗の変化がミリ単位の触覚として伝わります。自発呼吸から用手調節換気(手動での補助呼吸)への切り替えもシームレスに行えるため、気管挿管時のプレオキシゲネーションや麻酔導入期の気道確保において第一選択とされます。
一方で、明確な注意点や適応外となるケースも存在します。
- 成人の長時間換気:大量の新鮮ガス流量を必要とするため、ガス消費が激しく加温加湿が困難になり、気道粘膜を乾燥させる恐れがあります。
- 自発呼吸が完全に停止した状態での長時間の非監視搬送:人工呼吸器のようなアラーム機能がないため、万が一の接続外れや無呼吸を手動で検知し続けなければなりません。
- 高濃度のPEEP(呼気終末陽圧)を厳密に維持したい重症呼吸不全:尾部弁の微妙な手動調整に依存するため、精密な圧制御には向きません。