戴帽式とは、看護大学や看護専門学校で基礎分野の座学や学内演習を終えた学生が、病院での臨床実習へ赴く直前に行うセレモニーです。英語では「Capping Ceremony(キャッピング・セレモニー)」と呼ばれ、一人ひとりの頭上に初めてナースキャップが載せられることから「戴帽の儀」とも称されます。
その起源は19世紀中頃、近代看護の母であるフローレンス・ナイチンゲールがクリミア戦争に従軍した際、夜ごとランプを手に傷病兵を見回った献身的なエピソードに由来します。日本には大正から昭和初期にかけて導入され、白衣の天使としての誇りと責任を自覚させる教育的イベントとして定着しました。
式典の中で最もハイライトとなるのが「キャンドルサービス」です。ナイチンゲール像から採火された「親火」から、教員の手を経て学生一人ひとりの持つろうそくへと灯火が手渡されます。この火は「看護の精神の継承」と「患者の生命を守る光」を象徴しており、会場を暗転させて揺れる炎の中で唱和されるのがナイチンゲール誓詞です。
誓詞には「わが手に託されたる人々の幸のために、身を捧げん」という強烈な献身の意志が綴られており、これから過酷な医療現場に身を投じる学生たちにとって、学生気分を脱ぎ捨ててプロの自覚を宿す決定的な転換点となってきました。
実施される時期や学年としては、3年制の看護専門学校では1年次の秋から冬、4年制大学では2年次の秋頃に設定されるケースが一般的です。基礎看護技術の試験をパスした者だけが参列を許される「実習への許可証」という意味合いも持ち合わせていました。