インターネット上の言説では、初期のカンヌ受賞作『誰も知らない』の強烈なインパクトや『ディストラクション・ベイビーズ』『ガンニバル』などの過激な役柄から、柳楽優弥を「狂気的な怪演が得意な俳優」という一括りのイメージで語る向きが一部に見られます。
しかし、これは彼の俳優としての本質を見誤る典型的なステレオタイプです。関係者の取材データや近年のフィルモグラフィを丹念に追うと、真の凄みは「極めて普通の人間の日常的な佇まいを自然体で演じ切れる基礎体力の高さ」にあります。
例えば、Hulu・WOWOW等で配信された『オレは死んじまったゼ!』で演じた売れないホストの幽霊役や、『ライオンの隠れ家』の小森洸人役では、どこにでもいる平凡な男が抱える将来への不安や小さな喜びを、過剰な演出なしにリアルに表現しています。狂気的な役柄が際立つのは、土台となる「静かで日常的なリアリティ」が完璧に構築されているからこそ生じる対比の賜物なのです。