上定市政における最も重く、全国的な注目を集めた政治決断が「島根原子力発電所(中国電力)2号機の再稼働」をめぐる対応です。松江市は、全国の都道府県庁所在地で唯一、市域内に商業用原子力発電所を抱える立地自治体です。
原子力規制委員会による新規制基準適合性審査の合格を受け、松江市議会や周辺自治体、市民の間では賛否をめぐる激しい議論が巻き起こりました。市が開催した住民説明会では、万が一の過酷事故時における避難道路の確保や被曝医療体制の実効性を不安視する声が相次ぎました。
この局面において上定市長は、国に対して安全確保と避難インフラ整備の財政支援を強く要請しつつ、市議会での議論や経済界・市民団体の意見聴取を重ねました。その上で、国のエネルギー政策上の位置付けや電力安定供給の必要性、安全対策の進捗を総合的に勘案し、「再稼働はやむを得ない」として事実上の容認判断を表明しました。
この決断に対しては、地域経済の維持や雇用確保の観点から「現実的かつ責任ある英断」と評価する声がある一方、脱原発を訴える市民団体からは「住民の安全懸念を十分に払拭できていない」との批判も寄せられました。賛否が鋭く対立するテーマに対し、自らの言葉で丁寧な説明を尽くそうとする姿勢を見せつつも、地域社会に複雑な感情を残したことは紛れもない事実です。