厚生労働省により指定難病に認定されている脊髄小脳変性症は、手足の運動調節や身体の平衡感覚を司る小脳および脊髄の神経経路が障害される病気の総称である。遺伝性と非遺伝性(孤発性)に大別され、発症原因や病型には多様なバリエーションが存在する。
病気の初期症状は極めて緩やかに現れる。平坦な道でつまずきやすくなる、ボタンを留めるなど指先を使う作業が不自由になる、あるいは言葉が滑らかに出てこなくなるといった「小脳性失調」が典型的な合図となる。周囲からは単なる疲労や不注意に見誤られることも少なくない。
症状が進行すると、歩行には車椅子が必要となり、やがて発声や嚥下(食物を飲み込む動作)にも著しい困難をきたすようになる。しかし本疾患の大きな特徴は、知的機能や思考力が最後まで保たれる点にある。自分の思い通りに動かなくなった身体の中で意識だけが残り続ける辛さこそが、この病が持つ苛酷さの本質といえる。