フィットネス系SNSや知恵袋などのコミュニティでは、「毎日100回つま先立ちをしているが脚が太くならない」「むしろ細くなった気がする」といった投稿が定期的にトレンドへ浮上します。健康情報番組や短尺動画で紹介される手軽なエクササイズと、実際の筋肥大効果のあいだには著しいギャップが存在しています。
現場指導を行うパーソナルトレーナーへの取材でも、次のような証言が聞かれました。
「『歯磨きをしながらつま先立ちをしているのに変化がない』と相談に来られる方の動作を確認すると、100%といっていい確率でアキレス腱の弾性を使ってポンポンと弾んでいます。腱が衝撃を吸収してしまっているため、筋線維自体はほとんど伸張性収縮を起こしていません。これではウォーキングを一駅分歩くのと生理学的強度は変わらず、毛細血管の血流は良くなっても、筋横断面積を拡大させるシグナルは発生しません」
一方で、つま先立ち運動の効果と評判を精査すると、デスクワーク主体の女性や中高年層からは「夕方の足の重だるさが消えた」「冷え症が改善された」という極めて好意的な評価が圧倒的多数を占めています。これは、ふくらはぎの深層静脈を圧迫して血液を心臓へ送り返すミルキングアクション(筋ポンプ作用)が機能したことによる明らかな成果です。
要するに、「健康増進・むくみ解消」を目的とするならば、平地での自重つま先立ちは極めて費用対効果の高い良質な運動です。しかし、「細いふくらはぎを物理的に太くして逞しい下肢を作る」という目的においては、負荷強度・稼働域・張力時間のすべてが不足しているのが実態です。目的と手段のミスマッチこそが、ネット上で散見される不満の正体といえます。