ポスト安倍を語る上で避けて通れないのが、最大派閥であった清和政策研究会(旧安倍派)の自壊プロセスです。安倍氏の急逝後、派内には会長候補として萩生田光一氏、松野博一氏、西村康稔氏、高木毅氏、世耕弘成氏のいわゆる「5人衆」が存在していました。しかし、誰一人として他を圧倒するカリスマ性を示せず、派閥を統率する後継者は最後まで決まりませんでした。
派閥関係者の証言によれば、「安倍元首相自身が生前、あえて後継者を指名せず、競わせることで緊張感を保とうとしていた」という見方があります。しかし、絶対的指導者を失った組織において、この戦略は単なる足の引っ張り合いと相互不信を生む土壌と化しました。派内では「誰が立っても他の4人が引きずり降ろす」という内輪揉めが常態化し、決定的なリーダーシップが育たなかったのです。
そこに直撃したのが、2023年末から表面化した派閥パーティー収入の裏金問題でした。組織的な不透明経理の露呈によって5人衆は役職辞任や党内処分に追い込まれ、100名近くを擁した自民党最大のパワーセンターは事実上の解散へと追い込まれました。後継者争いに明け暮れた結果、組織そのものが社会的信頼を失うという、政党史に残る自滅劇でした。