本書の成立過程には、元少年Aと編集者による水面下の密接なやり取りが存在した。原稿の持ち込みから書籍化に至るまで、どのような編集判断が下され、どの記述が取捨選択されたのか。出版の裏側を検証すると、元少年Aの自己顕示欲と、ノンフィクション作品としてのセンセーショナリズムを天秤にかけた危うい編集作業の実態が浮かび上がる。
遺族側が求めた手記の回収や印税の受け取り拒否、そして出版差し止めをめぐる法論争は、現行法が抱える限界を露呈させた。日本には加害者が自らの犯罪を題材に商業的利益を得ることを禁じる「サムの息子法(Son of Sam law)」のような法規が存在しない。結果として、多額の印税が元少年Aの手に渡る構造がそのまま放置され、法曹関係者や一般読者の間に拭いがたい不条理感を植え付けることとなった。