テクノロジーの導入は、しばしば「職人の勘を奪う」と危惧される。しかし、この船の上で起きている現実はまったく逆だった。海底の微小な水温変化や海流の揺らぎを可視化するAIシステムは、ベテラン船長が長年培ってきた「魚の気配」を裏付ける補佐役として機能している。
「海の顔色を見るのは人間だ。機械はその視界を少し広げてくれるだけに過ぎない」。そう笑う船長の目は鋭い。無駄な網の投入を減らし、必要な分だけを最適なタイミングで獲る。過剰漁獲を防ぎながら利益率を最大化するこのスタイルは、SDGsという言葉が形骸化しつつある2026年において、きわめて実質的な解決策として説得力を持つ。