収納の奥行きが深すぎると感じる最大の理由は、人間の身体寸法と動線にあります。一般的な大人の腕の長さはおよそ60〜70cm程度。これを超える奥行きがある棚やクローゼットに物を直接置くと、無理に身体をかがめたり手前の物を退かしたりしなければ奥へ手が届きません。
この構造的な不便さが引き起こす罠は主に3点あります。第一に「視覚の遮断によるブラックホール化」です。手前に背の高い物を置くと奥が完全に見えなくなり、ストック品の二重買いや賞味期限切れが多発します。第二に「出し入れの手間による放置」。物を取るために「手前の物を動かす」という2アクション以上が必要になると、人間は無意識にその場所を使わなくなります。
そして第三が「上部と前後のデッドスペース放置」です。奥に届かない恐怖から手前ばかりに物を詰め込み、奥と上部に巨大な無駄空間が生まれてしまいます。この課題を根本から打破するには、収納を「棚に置く」感覚から「引き出して使う」感覚へ意識をシフトさせることが欠かせません。