介護コミュニティやSNS上で頻繁に飛び交うのが「老健に入れたら、わずか3ヶ月で追い出された」という悲痛な声です。この噂には、介護報酬制度上の明確な構造的理由が存在します。
厚生労働省が定める介護保険制度において、老健は「在宅復帰・在宅療養支援機能」を持つことが基本使命とされています。施設側は入所者ごとに3ヶ月に1回「退所判定委員会」を開催し、心身の回復度合いや家庭環境を総合評価して在宅へ戻れるかどうかを判定する義務を負っています。
さらに、老健には「超強化型」「在宅強化型」「加算型」「基本型」といった区分が存在し、在宅復帰率やベッド回転率(退所率)が高い施設ほど高い介護報酬(基本報酬)を得られる仕組みになっています。このインセンティブ設計が、現場スタッフによる「3ヶ月を目処に次の退所先(自宅や有料老人ホームなど)を検討しましょう」という働きかけにつながり、家族側には「追い出された」という印象を与えてしまうのです。
しかし、身体状態が著しく悪化していたり、受け入れ態勢がどうしても整わない場合に、本人の行き場がないまま路上に放り出されるような強制退去は制度上あり得ません。在宅復帰が困難な場合は、入所期間の延長や、特養・グループホームへの転院・転所支援がソーシャルワーカーによって進められます。