「怖くて美しい女性」というモチーフは、日本のポップカルチャーにおいて深い歴史を持つ。90年代後半に社会現象を巻き起こした映画『リング』の貞子は、黒髪で顔を覆い隠す演出によって「見えない恐怖」を世界中に植え付けた。直視できない恐怖の象徴として、そのビジュアルは今なおJホラーの原点として君臨している。
一方で、日本のホラー漫画界が誇る鬼才・伊藤潤二が生み出した名作『冨江』は、「美しさそのものが恐怖を引き起こす」という真逆のパラダイムシフトをもたらした。殺されても増殖し、男たちを狂気に狂わせる絶世の美女・冨江のヴィジュアルは、怪奇でありながら圧倒的に美しい。彼女の流し目や緻密な線画表現は、現代のイラストレーターにとっても究極のバイブルであり、今日における「美しいホラー」の精神的支柱となっている。