夏まゆみさんが末期のがんと診断されたのは、亡くなる直前までの多忙な活動の裏でのことだった。周囲のスタッフや教え子たちにさえ、進行した病状をほとんど明かさなかったという。体調の異変を感じつつも、「演出家・振付師として現場に心配をかけたくない」というプロとしての美学が、彼女を沈黙させ続けた。
病床にあっても彼女の頭の中にあったのは、自らの身体のことではなく、常にダンスと教え子たちの未来だった。関係者によると、入院中もベッドの上で振り付けの構想をノートに書き留め、細かなステップの手順を頭の中で組み立てていたという。がんの進行に伴う身体的な苦痛を押しのけ、表現者としての誇りを持ち続けたその記録は、まさに壮絶の一言に尽きる。