事の発端となった「ガチ王決定戦」は、バラエティ番組の文脈において極めて異端な実験だった。日本テレビをはじめとする主要キー局が模索してきた「リアルとフェイクの境界線」を、松尾駿は完全に破壊してみせたのだ。笑わせようとする小細工を一切捨て去り、ただただ本気で競技や課題に対峙する。そのストイックすぎる表情が、逆に視聴者の笑いのツボを強打し、スタジオの共演者たちを恐怖と歓喜の渦に巻き込んだ。
現場にいた制作ディレクターはこう振り返る。「リハーサルの段階から松尾さんの気迫が違っていた。ボケようとする気配がまったくない。完全にアスリートか、あるいは修羅場をくぐり抜けたドキュメンタリーの主人公のような顔をしていた。その張り詰めた糸が切れるか切れないかの瀬戸際こそが、前代未聞の爆発力を生んだ」。