日本のアニメ表現史を語る上で、山田尚子監督が手掛けた『平家物語』がもたらした衝撃はあまりに大きい。滅びゆく平家の人々を見つめる少女・びわの瞳と、琵琶の音色に乗せて紡がれる鎮魂の物語は、古典翻案のハードルを一気に引き上げた。微細な感情の揺らぎや光の粒子を捉える演出力は、歴史という冷徹な事実の中に息づく人間の体温を生々しく描き出したのである。
その系譜に呼応するように登場した湯浅政明監督の『犬王』もまた、忘れ去られた語り部たちの魂をロックオペラ的熱量で現代に蘇らせた。両作に通底しているのは、正史からこぼれ落ちた名もなき者たちの声をどう拾い上げるかという切実な問いだ。今回のプロジェクトが放つ磁場も、まさにこの豊かな表現の地平から真っ直ぐに伸びている。