松島屋を語る上で欠かせない歴史的なエピソードがある。昭和天皇が皇太子時代、高輪にあった旧東伏見宮邸(後の高輪皇族邸)に滞在された折、松島屋の豆大福を好んで召し上がったという記録だ。やがて宮内庁御用達としても愛され、皇室ゆかりの味としてその名を広く知られるようになった。
その味の核となるのが、北海道産赤エンドウ豆の絶妙な炊き加減と塩加減だ。噛んだ瞬間にプチッと弾ける豆の歯ごたえ、続いて広がる程よい塩気。それが北海道産小豆をじっくり練り上げた甘さ控えめの粒餡と出会った瞬間、口の中で劇的な味の協奏曲が奏でられる。餅自体は極限まで薄く、餡と豆を包み込むための器に徹しているかのようだ。気品と力強さが共存するこの味こそ、昭和天皇を虜にした所以だろう。