昭和から平成にかけて、このフレーズは日本人のポピュラーカルチャーの中で独特の立ち位置を確立していった。1980年代から90年代のバブル景気期、テレビのトレンディドラマやバラエティ番組において、「君の瞳に乾杯」はプレイボーイやキザな男性キャラクターが口にするお約束のギャグ、あるいは究極の口説き文句としてパロディ化されていく。
過剰なロマンティシズムを笑いに変える消費スタイルは、一見するとこの言葉の威厳を失わせたかのように思われた。しかし、実際にはパロディ化されることによって、日本人のほぼ全員が知る「共有言語」へと定着したのである。誰もが知っているけれど、現実のデートで口にするにはあまりにも恥ずかしい——そんな絶妙なスタンスこそが、この言葉の生存戦略だった。