自然界において最も冷たい場所は、広大な深宇宙です。全宇宙はビッグバンの名残である「宇宙マイクロ波背景放射」に温められており、平均温度は約2.7K(マイナス270.45℃)に保たれています。また、地球から5000光年離れた「ブーメラン星雲」では、ガスが猛烈な勢いで宇宙空間へ噴出する断熱膨張によって、天然環境としては最低の約1Kが観測されています。
しかし現在、宇宙で最も冷たい場所は深宇宙ではなく、地球上の物理学実験室および国際宇宙ステーション(ISS)の「コールド・アトム・ラボ(CAL)」です。
地上では重力によって原子が落下してしまうため冷却時間に限界がありますが、微小重力環境の宇宙ステーションでは原子を長時間空間に保持できます。近年の実験では、数十ピコケルビン(1ピコケルビン=1兆分の1ケルビン)という驚異的な超極低温が維持され、極低温下での暗黒物質(ダークマター)探索や、一般相対性理論と量子力学の統合を検証する実験が精力的に進められています。