手編みの世界に新しい風を吹き込んだ原点は、文化出版局から刊行された一連の作品集だった。当時の手編み本といえば、実用性を前面に出した定番服か初心者向けのシンプルな小物が主流であった。しかし、彼女が提案したニットデザイン・手編みの作風は、伝統的なフェアアイルやアラン模様を踏襲しながらも、現代的なシルエットと自由な色使いを融合させた鮮烈なものだった。
その後発表された著書『うれしいニット』は、手芸本の枠組みを大きく跳び越え、ファッションやカルチャーを愛する層にまで波及する異例のムーブメントを起こす。「編むこと自体の悦び」を瑞々しい言葉とダイナミックなビジュアルで表現した同書は、多くの人々を編み物の面白さへと引きずり込んだ。編み物を単なる家事の延長から、自らを表現する洗練されたクリエイティブへと昇華させた意味は計り知れない。