一方で、檜原村が纏う独特の厳かな雰囲気そのものが、訪れる者に神秘的な怖れを抱かせるのも事実だ。古くから武蔵御嶽神社へと続く修験道のルートとして開かれてきたこの地域には、山岳信仰の残影が今も色濃く残る。
村内には樹齢数百年に達する巨大な杉の木や、落差数十メートルを誇る名瀑「払沢の滝」をはじめとする数々の滝が点在している。昼間であっても太陽の光が届きにくい深い谷間や、古くから神聖視されてきた巨石群の前に立つと、人は自らの小ささと自然の圧倒的なスケール感に圧倒される。この「神聖さへの畏怖」が、現代人の感覚においては「どこか気味が悪い」「畏れ多い」という感情へ変換されている側面も見逃せない。