彼のキャリアを語る上で欠かせないのが、長年にわたり二人三脚で走ってきた田辺エージェンシーとの深い信頼関係である。芸能界の波風からタモリ(森田一義)を守り抜き、タレントとしての自由度を極限まで保ち続けたプロダクションの存在があったからこそ、あの独自のスタイルが成立した。
密室芸人としてデビューした狂気じみたアングラ時代から、国民的司会者へと変貌を遂げるプロセスには、多くの知られざる裏話が存在する。カメラが回っていない場所で見せる素顔の「森田一義」は、料理を嗜み、ジャズに耳を傾け、自作の無線機を弄る風雅な文化人そのものだ。虚構と現実を軽やかに行き来するしなやかさが、そこにはある。