今回の目玉である露天風呂の改装には、外部には決して明かされなかった難題が横たわっていた。「黄金の湯」は空気に触れると独特の茶褐色に変色し、浴槽の配管にカルシウムや鉄分がびっしりと固着しやすい。湯船の傾斜が1ミリ狂うだけで、酸化のスピードが変わり、湯の肌触りが劇的に劣化してしまうのだ。設計チームは数ヶ月にわたり湯の流れを数値化し、湯口の角度と落差を数ミリ単位で削り直したという。
「朝一番の光が水面に差し込む午前6時半。その瞬間が、もっとも湯が澄み、成分が肌に吸い付く」と宿の統括責任者は明かす。黄金の湯を極限まで堪能するコツは、入浴後すぐに上がり湯で洗い流さないことだ。濃厚な硫酸塩泉の皮膜が肌を包み込み、まるで天然のヴェールのように冷気を遮断してくれる。さらに、夕食前の17時頃と、翌朝の清澄な大気の中での入浴を組み合わせることで、自律神経が完全にリセットされる感覚を味わえる。