SNSやネット掲示板では「麺をすするのは日本の粋な文化だから、むせるのは気管支が弱い証拠」「思い切りすすらないと美味しくない」といった根性論が散見されます。しかし、この言説には大きな盲点が存在します。
江戸時代に蕎麦をすする文化が定着したのは、粘度の低い冷たいつゆと細い麺を鼻腔へ抜ける香りと共に楽しむためでした。現代の濃厚な豚骨ラーメンや背脂系スープ、高粘度のつけ麺などは、江戸期の蕎麦とは質量も脂質濃度も全く異なります。油分と熱を持った高密度の液体を勢いよく吸引することは、物理的に気道粘膜への負担が極めて高い危険な行為です。
「すすること=絶対の正義」という固定観念を捨て、料理の性質や自身の喉のコンディションに合わせて吸引圧を調整することが、大人の食習慣として求められます。