本作が巻き起こした反響を振り返ると、読者の感想・評判は大きく二極化してきました。
好意的なレビューでは、「中国人の国民性やプラグマティズム(実用主義)を嫌味なく描いている」「家族を第一に思いやる月さんの芯の強さに感銘を受けた」といった声が圧倒的多数を占めました。日中関係の政治的緊張が高まっていた時期において、国家の枠組みを超えた「個人対個人のリアルな温もり」を届けた功績は各方面から高く評価されています。
一方で、連載中には度重なるネット炎上にも晒されました。中国社会の実情を描写するたびに、ネット右派層からは「中国礼賛のプロパガンダ漫画だ」とバッシングを受け、逆に中国国内のネットユーザーからは「中国人女性をステレオタイプ化して茶化している」と批判を浴びる板挟みの構造が生じたのです。
さらに、前述した横領事件を描いた経済漫画の出版時には、「被害者面をしているが経営責任はどうなのか」といった心無い批判も一部で噴出しました。しかし、井上氏は感情的な言い訳に逃げることなく、帳簿の数字や法的手続きの進捗を淡々とロジカルに図解することで、悪意ある風評を跳ね除けていきました。