時名きうい氏による講談社『姉フレンド』連載の原作漫画と、実写ドラマ版には明確なアプローチの違いが存在します。原作の魅力は、大人の女性読者を惹きつける甘くスリリングな溺愛描写と、スマートで色気あふれる匠の心理戦にあります。一方、脚本・演出陣がドラマ版で下した決断は、「匠の視点(モノローグ)の完全開帳」と「群像劇としての心理描写の拡張」でした。
原作では物語中盤まで謎に包まれていた匠の本音が、ドラマ版では第1話のラストから一気に視聴者へ明かされます。外では「俺のためにウソの妻になれ」と傲慢に振る舞いながら、心の中では「八重が可愛すぎて死ぬ」「頼むから断らないでくれ」と絶叫する匠の姿は、菊池風磨の卓越した顔芸と独白によって、極上のラブコメディへと生まれ変わりました。
さらに特筆すべきは、進藤将暉のキャラクター設定の深化です。原作以上に進藤の内面にスポットが当てられ、第6話を中心とする「進藤回」では、彼が抱える匠への友情、あるいはそれ以上の名づけようのない思慕と、八重の存在に対する複雑な祝福の念が丁寧に掬い取られました。原作者への深いリスペクトを払いつつも、映像作品として30分枠のスピード感に最適化された脚本の妙技が光ります。
この重層的なドラマの世界観を決定づけたのが、Sexy Zoneによる主題歌「本音と建前」でした。椎名林檎が作詞・作曲・編曲を手掛けたこの楽曲は、不協和音をはらんだ洗練されたジャズアンサンブルと、人間の表層(建前)と深層(本音)を暴き立てる詞世界によって、ドラマのテーマ性を音楽面から完全に統括していました。