2006年当時のインターネットは、ブロードバンドの普及とともに個人ブログ、テキストサイト、掲示板サイト「2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)」、そして黎明期にあったYouTubeなどの動画プラットフォームが急激な熱量を帯びていた転換期でした。放送直後から、ネット掲示板の実況スレッドには驚愕と爆笑の声が殺到します。
視聴者からは「スプーがクリーチャーに進化した」「子どもに見せたら本気で泣き出した」「夢に出てきそうなトラウマレベル」といった書き込みが相次ぎました。単に「イラストが下手」という次元を超え、見る者の深層心理に訴えかけるような不気味さと、はいだしょうこ本人の純真無垢な笑顔とのギャップが、凄まじい認知的不協和を引き起こしたのです。
ネットコミュニティはこの現象を瞬く間にミーム化しました。アスキーアート(AA)職人たちによって即座にキャラクター化され、Flashアニメーションやファンアート、さらには3Dポリゴンモデルを制作してホラーゲーム風の動画を仕立てるユーザーまで現れました。当時、NHK側が権利保護の観点から動画の削除要請を精力的に行ったことも、かえってネットユーザーの探究心と拡散欲を刺激する結果となり、「見たいのに消される伝説の動画」として神格化されていった側面も見逃せません。
しかし、このネットの反応において決定的に重要だったのは、悪意に満ちたバッシングがほぼ皆無だった点です。視聴者の大半は「悪ふざけで描いたのではない」という事実を直感的に理解していました。宝塚歌劇団出身という非の打ちどころのない経歴と、抜群の歌唱力を持つうたのおねえさんが、1ミリの悪意もなく「本気で可愛く描こうとした結果の悲劇」であったからこそ、世間は彼女を激しく叩くのではなく、「愛すべき画伯」として熱狂的に受け入れたのです。