辻新之助を語る上で、読者の誰もが真っ先に思い浮かべるのが「女子が極端に苦手」という際立った個性です。作中でも、女子高生隊員と対面した際に視線を不自然に逸らし、時には顔を赤らめて固まってしまうシーンがコミカルに描かれています。クール系イケメンの典型に見える彼が、なぜこれほどまでに女性を前にすると取り乱してしまうのでしょうか。
コミックスの質問コーナー(Q&A)や公式見解によると、その決定的な理由は「小学校高学年から中高一貫の男子校に通っているため、同年代の女性と接する機会が極端に少なかったから」と明かされています。すなわち、女性に対する嫌悪感や女性蔑視(ミソジニー)ではなく、純粋な「コミュニケーション経験の不足(免疫の無さ)」が根本的な原因です。
心理学的な観点から分析すると、辻の態度は「心理的バウンダリー(自他の境界線)」に対する過剰な敬意と慎重さの表れと解釈できます。辻は生真面目で礼儀正しい性格であるがゆえに、「相手の女性に不快な思いをさせてはならない」「異性に対して失礼があってはならない」という道徳的な自意識が過剰に働き、それが「どう接していいか分からない」というフリーズ反応に直結していると考えられます。
ここで特筆すべきは、辻のプロフェッショナリズムです。日常会話では女子と目を合わせることすら困難な彼ですが、「トリオン体の戦闘時」には女性兵士が相手であっても一切の躊躇なく太刀を振るい、的確に撃破します。戦場では私情や異性への意識を完全に排し、一人の兵士として任務を全うする――この徹底したオン・オフの切り替えと、日常で見せるウブな素顔のギャップが、読者に「かわいい」「愛らしい」と評される最大の要因です。