蛹室が壊れたり、蛹が不自然な体勢で固まっていたりする場合の唯一の救済策が「人工蛹室」の導入だ。角の曲がりや翅(はね)の閉じきらない現象である羽化不全を劇的に減らし、生存率を90%以上に引き上げるプロの技術として定着している。
家庭で最も手軽、かつ安全に作れるのは園芸用の吸水スポンジ(オアシス)を用いた人工蛹室だ。作り方は極めてシンプルだが、ミリ単位の精度が求められる。
まず、吸水スポンジを飼育ケースに入る大きさにカットし、スプーンを使って縦長の楕円形のくぼみを掘る。この際、頭部側(ツノ側)をやや高く傾斜させ、深さは蛹の体が半分以上収まる程度にするのが最大のコツだ。角度が平坦すぎると、羽化時に殻を脱ぎ捨てて翅を伸ばすスペースが確保できず、重篤な羽化不全を引き起こす。
スポンジに十分な水分を含ませて軽く水気を切った後、掘ったくぼみに蛹を傷つけないよう優しく移送する。手で直に触れると皮脂や雑菌が付着するため、清潔なスプーンや柔らかいスエード調の手袋を使用するのが望ましい。これだけで、崩壊した蛹室から救出された個体も安全に羽化の瞬間を迎えられる。