一般的に広く知られるケナガマンモスの特徴といえば全身を覆う長大な剛毛ですが、極寒のツンドラ気候を生き抜くための形態適応はそれだけに留まりません。現生のアフリカゾウやアジアゾウと並べて観察すると、驚くほど明確な解剖学的差異が確認できます。
最も顕著な違いの一つが耳のサイズです。熱帯・亜熱帯に暮らすアフリカゾウは、体温を下げるためのラジエーターとして巨大な耳を発達させ、血管を通じて熱を効率的に体外へ放散しています。一方、マンモスの耳は現生象の5分の1から10分の1程度しかありません。これは寒冷地適応の生物学的原則である「アレンの法則(寒冷地に棲む恒温動物ほど突出部が小さくなる)」に合致しており、耳が小さい理由は体熱の損失を防ぎ、末端の凍傷を回避するためでした。
また、マンモスの牙の形状も決定的な鑑別ポイントです。現生のアフリカゾウの牙が前下方に向かって比較的まっすぐ伸びているのに対し、ケナガマンモスの牙は外側へ大きく広がりながら内側上方に螺旋状に強く湾曲しています。最長で4メートルを超えるこの湾曲牙は、深い雪をスノープラウ(除雪板)のようにかき分け、地表のイネ科植物や低木を掘り起こして食べるための道具として機能していました。
骨格構造においても、現生象の背中のラインが平坦あるいは弓なり(アーチ状)であるのに対し、マンモスは肩部が極端に盛り上がり、後方へ向かって急傾斜するスロープ状の体型をしています。頭頂部にはドーム状の高まりがあり、首の後ろから背中にかけては過酷な冬の絶食に耐えるための大量の脂肪組織(コブ)が蓄えられていました。