松濤が他の高級住宅街と決定的に異なるのは、土地の切り売りを物理的に拒絶する厳格な都市計画にあります。渋谷区が定める建築協定および地区計画により、松濤一丁目・二丁目、神山町一帯は「第一種低層住居専用地域」に指定されており、建物の高さは10メートル(実質地上3階建てまで)に厳しく制限されています。
さらに決定的なのが「敷地面積の最低限度(200平米規制)」です。都心部で一般的な狭小住宅(いわゆるペンシルハウス)やミニ開発は法的に一切許可されません。松濤で家を建てる場合、最低でも約60.5坪(200平方メートル)以上の敷地を確保しなければならないのです。
2026年現在の公示地価や実勢相場に基づくと、松濤エリアの土地坪単価は700万円から1,000万円超に達します。つまり、更地を取得するだけで土地代として最低でも4億2,000万〜6億円以上、そこに豪邸としての建築費用(坪単価200万〜300万円超)を加えれば、総事業費は瞬く間に7億〜10億円を突破します。これこそが、資本力のない一般層の参入を完全に排除し、街の景観と格式を100年にわたって担保してきた構造的メカニズムです。