今回の集団感染において、感染拡大の主因となったのが結核菌特有の「空気感染(飛沫核感染)」です。一般的な飛沫感染であれば、マスクの着用や一定の対人距離で大幅にリスクを低減できますが、結核菌を含む飛沫核は水分が蒸発して直径5マイクロメートル以下の微粒子となり、空気中を長時間漂います。
中学校生活の現場を振り返ると、冬場の防寒や夏場の冷房効率を優先するあまり、換気が不十分になりがちな普通教室、さらには合唱練習や吹奏楽、激しい呼吸を伴う屋内運動部など、換気不十分な密閉空間で声を出す場面が数多く存在します。排菌状態にあった患者と同じ空間で合計数百時間以上を共に過ごした場合、感染リスクは跳ね上がります。
さらに事態を複雑にしたのが、学校結核クラスターにおける潜伏期間の長さです。結核菌を吸い込んでも、健康な成人生徒であれば約9割は免疫力によって菌を封じ込め、生涯発病しません。しかし、免疫をすり抜けた菌が数カ月以上の潜伏期を経てゆっくりと増殖し、風邪に似た軽微な咳から始まるため、周囲も本人も警戒心を抱きにくいという構造的な盲点が存在していました。