化学の試験問題で出題者が好んでトラップを仕掛けるのが、通常は酸化剤として働きながら、状況によって還元剤へと反転する「二面性」を持った物質です。その筆頭が過酸化水素(H₂O₂)と二酸化硫黄(SO₂)です。
なぜこれらの物質は過酸化水素酸化剤還元剤両方の性質を帯びるのでしょうか。その真相は、構成元素が取り得る「酸化数の可変域」に隠されています。
酸素原子の酸化数は通常の化合物では「-2」、単体(O₂)では「0」です。しかし過酸化水素に含まれる酸素原子の酸化数は極めて珍しい「-1」という中間状態に位置しています。そのため、相手が強い還元剤であれば電子を奪って酸化数-2(H₂O)へと下がり(=酸化剤)、過マンガン酸カリウムのような猛烈に強い酸化剤が立ちはだかると、自らが電子を放出して酸化数0(O₂)へと上がる(=還元剤)のです。
一方の二酸化硫黄も同様です。硫黄原子は-2(硫化水素など)から+6(硫酸など)までの酸化数を取ることができますが、SO₂における硫黄の酸化数は「+4」という中間の数値です。そのため、基本的には電子を手放してより安定な硫酸イオン(SO₄²⁻、酸化数+6)になろうとする還元剤として機能します。しかし、相手がより強力な還元剤である硫化水素(H₂S、酸化数-2)の場合に限り、自らが電子を受け取って単体の硫黄(S、酸化数0)へと還元される酸化剤として振る舞います。
この二酸化硫黄酸化還元反応(2H₂S + SO₂ → 3S + 2H₂O)は、温泉地などで見られる硫黄成分の生成や、火口付近の火山ガスの反応機構として極めて有名であり、入試でも毎年どこかの大学で確実に狙われる最頻出テーマの一つです。酸化剤還元剤強さ一覧の序列において、「過マンガン酸塩 > 過酸化水素 > 二酸化硫黄 > 硫化水素」という相対関係を整理しておくことが、確実な見分け方の秘訣となります。