ネット上の掲示板やSNSでは、「埋まった黒ニキビの出し方」として裁縫針や眉毛用ピンセットを用いた自力除去法がまことしやかに語られています。「針の先で皮膚の薄皮を破り、ピンセットで芯を引っこ抜くとスッキリ取れる」といった動画や投稿に惹かれ、真似をしてしまう一般ユーザーが後を絶ちません。
しかし、形成外科医や皮膚科専門医が一様に警告するのは、針で出す危険性の甚大さです。家庭用の裁縫針をライターで炙った程度では無菌状態にはならず、黄色ブドウ球菌やアクネ菌を真皮層の奥深くへと直接植え付ける行為に等しいのが実情です。さらに、爪や器具で皮膚を強く挟み込んで押し出す際、破壊されるのは角栓だけではありません。毛穴を取り囲む漏斗部の上皮構造と真皮のコラーゲン繊維が無残に押し潰されます。
結果として毛穴の壁が破裂し、皮下組織へ角栓の内容物と細菌が漏れ出して激しい炎症性結節(赤ニキビ・黄ニキビ)へと悪化します。最悪の場合、損傷した真皮は二度と元の滑らかな状態には戻らず、深いクレーター(陥凹性瘢痕)やアイスピック型の毛穴の開きとして一生顔に残ることになります。
心理学・精神医学の観点からも、この「毛穴をいじる行為」には深い病理が潜んでいます。肌の微細な凹凸や黒ずみが気になり、鏡の前で何十分も角栓を無理やり押し出したりむしり取ったりしてしまう衝動は、「スキン・ピッキング症候群(強迫的皮膚むしり症)」として臨床的にも認知されています。本人は「綺麗にしたい」という美意識から行動しているつもりでも、実際には無意識のストレス発散や強迫観念が自傷的な肌破壊へと繋がっている構図です。この負の連鎖を断ち切るには、「自力でなんとかしようとする執着」を手放す知性が不可欠です。