トラウマインフォームドケアとは?現場を変える原則と実践の全貌

トラウマインフォームドケアとは?現場を変える原則と実践の全貌

トラウマインフォームドケアとは?現場を変える原則と実践の全貌の具体的な内容に迫る! 専門的な視点でまとめました。

対人支援の現場で広く浸透しつつあるトラウマインフォームドケアとは、一言で表せば「トラウマのメガネをかけて相手と環境を見つめ直す姿勢」を指します。虐待、DV、いじめ、事故、重い病気、あるいは組織的なハラスメントなど、人生を揺るがす過酷なストレス体験(トラウマ)は、個人の脳機能や神経系、対人認知に深い痕跡を残します。こうしたトラウマの影響を深く理解した上で関わりを設計するのがこのケアの本質です。

従来の支援モデルとトラウマインフォームドケアの最大の違いは、当事者に向ける「根本的な問い」にあります。従来型のアプローチでは、暴言や引きこもり、不登校、自傷行為、依存症などの行動に対し、「なぜ規則を守れないのか」「この人のどこに欠陥や疾患があるのか(What is wrong with you?)」という原因追及や矯正の眼差しが向けられがちでした。これに対し、トラウマインフォームドケアでは「この人に過去、一体何が起きたのか(What happened to you?)」と問い直します。

一見不可解に見える攻撃性や極端な不信感も、過去の耐え難い恐怖や無力感を生き延びるために身につけた必死の防衛機制(コーピング)にほかなりません。当事者を「病理を持った問題児」として断罪するのではなく、「過酷な環境に適応しようとした生存者」として捉えることで、支援関係の基盤となる精神科や福祉支援における心理的安全性が劇的に高まります。

もう一つの決定的な違いは、「専門の精神科医やカウンセラーだけが行う治療」ではない点です。受付の事務職員、病棟の看護師、スクールバスの運転手、学校の教員に至るまで、施設や組織に関係するすべてのスタッフが共通の認識を持ち、不用意な威圧や強要を排除する「環境そのものの治療的再構築」を目指す点に革新性があります。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。