「臭くないのになぜか爆音が出る」という現象に直面したとき、多くの人は身体の異常を疑います。しかし、生理学的な観点から見れば、臭気と音の大きさは基本的に反比例に近い関係にあります。おならの音の正体は、体内で発生したガスが肛門を通過する際に、肛門括約筋や左右の臀部の皮膚を激しく振動させる「物理的な振動音」にほかなりません。管楽器のトランペットが唇の振動で音を鳴らすのとまったく同じ力学が、お尻の出口で起きています。
おならを構成するガスの約99%は、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、メタンといった完全に無色無臭の気体です。そして、この無臭ガスの大半(およそ70%以上)は、呼吸や飲食時に口から無意識に飲み込まれた「外気(空気)」で占められています。残るわずか1%未満の成分に、便臭のもととなる硫化水素、スカトール、インドールなどの悪臭物質が含まれているにすぎません。
腸内に大量の無臭空気が溜まっていると、出口へ向かう気体の体積が大きくなるため、腸壁を強く圧迫します。すると、肛門から押し出される際の勢い(内圧)が一気に跳ね上がり、狭い開口部をハイスピードで気流が突き抜けます。その結果、周囲の皮膚をバタバタと激しく共振させ、乾いたラッパのような高音や雷のような爆音を響かせるわけです。つまり、「臭くないのに音が大きい」状態は、腸内で腐敗物質が異常発酵しているのではなく、「純粋な空気の塊が高圧で一気に噴射された」という物理的な結果を示しています。