ネット通販やお取り寄せ市場の拡大に伴い、「気仙沼産カツオ」に関する誤認やトラブルも散見されるようになりました。賢い読者として知っておくべき現場のリアルを整理します。
最も多い誤解が、「冷凍カツオのタタキと生鮮カツオの混同」です。スーパーや安価なギフトセットで出回るカツオの多くは、遠洋巻き網船が大量捕獲して船内でブライン急速冷凍した原料を使用しています。これらも保存食として優れていますが、気仙沼が誇る「生鮮カツオ」とは食感も香りも根本的に異なります。気仙沼港が日本一を競っているのは、水揚げから一度も凍結されずに店頭へ並ぶ完全無凍結(チルド)の生鮮品です。チルドのカツオは繊維が破壊されていないため、特有のモチモチとした「もち鰹」の弾力があり、生臭さの原因となるドリップ(解凍液)が一切出ません。
また、「不漁の年はすべて不味い」「豊漁だから品質が落ちる」というネット上の俗説も明確な誤りです。不漁期は一網打尽にできないぶん、一本釣りで丁寧に扱われた特級品が集まりやすく、逆に豊漁期はエサを潤沢に食べた良質な個体が群れをなしているため、全体の平均クオリティが底上げされます。市場のプロが選定基準にするのは「水揚げ量」そのものよりも、「釣り上げられてからセリ落とされるまでの時間」と「船倉内の水氷の温度管理」です。